知っておきたいペアローン物件の売却ガイド
共働き世帯が増え、理想の住まいを叶えるために夫婦でローンを組むケースが一般的になりました。しかし、離婚などの環境の変化で家を手放す際、ペアローン物件には特有のルールや注意点が存在します。後悔しない取引のためにも、正しい知識を備えておきましょう。そこで本記事では、売却をスムーズに進めるコツを解説します。
ふたりで力をあわせて組むペアローンの仕組み
住宅を購入する際、ひとりだけの収入では希望の借入額に届かない場合に、夫婦や親子が個別にローンを契約する方法があります。これがペアローンと呼ばれる仕組みで、ふたりともが主たる債務者としてお金を借りる形になります。
お互いがお互いの連帯保証人になるという約束を交わし、1本の大きなローンではなく、2本のローンが並走しているイメージをもつとわかりやすいかもしれません。
この形式を選ぶと、借入額に応じて家の所有権もふたりの持ち分として登記されます。それぞれの収入にあわせて住宅ローン控除が受けられる税制上のメリットがある一方で、家を売る際にはふたつの債務を同時に解消しなければならない複雑さも抱えています。
ペアローン物件を売却する際のスムーズな段取り
ペアローンで買った家を売る場合でも、大まかなステップは一般的な不動産売却と変わりません。しかし、所有者がふたりいる点が、手続きのあらゆる場面で関わってきます。
最初の査定から販売開始まで
まずは不動産会社に家がいくらで売れそうか査定を依頼するところから始まります。この際、ふたりそれぞれのローンの残債を正確に把握しておくことが欠かせません。また、不動産会社と結ぶ媒介契約も、名義人全員が納得したうえで行う必要があります。
売り出し価格を決める際も、ふたりの合意がなければ進められないため、事前によく話し合っておくことが大切です。
契約の締結から引き渡し
買主が見つかったあとの売買契約や最後の手続きである引き渡しにおいても、ふたりの立ち会いが必要になります。どちらかひとりが「売りたくない」と言い出せば、取引そのものが成立しません。
また、ローンの完済手続きもふたつの銀行口座からそれぞれ行うことになるため、当日までに必要な書類を漏れなく揃えておく、ふたり分の念入りな準備が求められます。
売却価格とローン残高の関係で変わる出口戦略
家を売ったお金でローンをすべて返せるかどうかは、その後の生活設計に大きく影響します。売却価格とローンの残り具合によって、状況はふたつのパターンに分かれます。
アンダーローンで利益が出る場合
家を売った金額が、ふたりのローン残高の合計を上回っている状態をアンダーローンと呼びます。このケースでは、売却代金だけで借金をすべて清算できるため、精神的な負担も少なく手続きをサクサクと進められます。
ローンを返したあとに手元にお金が残れば、それは持ち分比率に応じてふたりの利益になります。次の住まいの頭金に充てるなど、選択肢が広がる理想的な展開といえます。
オーバーローンで手出しが必要な場合
逆に、売却価格がローン残高に届かない状態をオーバーローンといいます。銀行はローンが完済されない限り、家に設定している「抵当権」を外してくれません。そのため、足りない分は自分たちの貯金から補填して、完済させる必要があります。もし貯金が足りなければ、任意売却という特別な方法を検討するか、売却自体を諦めるしかありません。
ペアローンの場合はふたりの合計額で判断するため、ひとりが返せてももうひとりが返せないといった事態にならないよう、より慎重な資金計画が必要です。
ペアローン物件の売却で失敗しないための3つの重要事項
ふたりで責任を分担しているからこそ、売却時には単独名義のときには見えなかった壁にぶつかることがあります。とくに以下の3点は、後回しにすると深刻な問題になりかねません。
所有者全員の意思をひとつにまとめる
最大の注意点は、名義人全員が売却に同意していることです。ペアローン物件は、たとえ夫婦であっても自分の持ち分だけを勝手に売ることは実質的に不可能です。離婚や意見の相違などで関係が悪化している場合、売却のタイミングや価格を巡って話し合いが平行線をたどってしまう恐れがあります。
入り口の段階で、売却の目的と着地点をしっかりと共有しておくことが、何よりも優先されるべき事項です。
手続きの手間と諸費用が2倍かかる
意外と見落としがちなのが、コストと手間の問題です。ローンが2本あると、銀行に支払う事務手数料や抵当権を抹消するための登記費用も、基本的にはふたり分ずつ発生します。
印紙代や仲介手数料などは物件価格に対してかかりますが、銀行関連の手続き費用は契約の数に比例して増えるため、当初の予算よりも支出が多くなることを覚悟しておかなければなりません。
ローン残高の正確な把握と確認
最後に、それぞれのローンの残債を1円単位で正確に確認することです。ペアローンでは、一方のローンは順調に減っていても、もう一方は返済期間や金利タイプが異なり、思うように減っていないというケースもあり得ます。
売却代金をどう配分してそれぞれのローンに充てるのか、あるいは不足分をどう分担するのかを明確にしておかないと、最後の最後で決済ができなくなる最悪の事態を招きます。
まとめ
ペアローン物件の売却は、ふたりで協力して大きな資産を運用してきた結果を締めくくる大切な作業です。ひとりで決めることができない分、コミュニケーションの密度が成功の鍵を握ります。ローンの残高と市場の相場を冷静に見極め、ふたりが同じ方向を向いて準備を進めることで、納得のいく形で次のステップへと進められます。不安な点は早めに専門家へ相談し、確実な計画を立てていくことをおすすめします。














