不動産売却時に注意したいトラブルとその回避方法
不動産の売却は、人生のなかでも大きな決断のひとつですが、さまざまなトラブルが発生することもあります。契約内容の誤解や不備、引き渡し時の問題など、後悔しないためには事前に知識を深め、慎重に進めることが重要です。本記事では、不動産売却時にありがちなトラブルとその対処法について解説します。
不動産売却の手順を理解しよう
不動産売却は、マンションや一戸建て、土地などの不動産を所有している人が、その物件を手放して売り手を見つける過程です。高価な財産であるため、通常、人生で何度も経験することはありません。このため、多くの人にとって不動産売却は、はじめての経験となることが多く、その手続きや流れを理解しておくことが重要です。
査定の依頼
不動産を売却することを決意したら、まずは不動産会社に査定を依頼しましょう。査定を受けることで、物件の市場価値や販売価格の目安がわかります。この時、不動産会社の担当者の対応や説明の丁寧さ、売却に対する提案内容をしっかりチェックしておくことが大切です。
売却プランの整理
査定を依頼する前に「いつ頃までに売却したいか」「希望価格はどのくらいか」をある程度決めておくと、スムーズに進めやすくなります。
不動産会社の選定と媒介契約
査定後、信頼できる不動産会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に売主と買主の仲介を依頼する契約です。契約の種類には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。
売却活動の開始
契約を結んだ後、不動産会社とともに売却活動を開始します。不動産会社は広告や宣伝活動を行い、売主は内覧の準備や対応を担当します。
売買契約の締結
購入希望者が現れ、購入申込書を受け取った後、条件の調整が完了すると売買契約に進みます。この際、買主から手付金を受け取ることが一般的です。手付金の相場は売買価格の5%程度とされています。
決済と物件の引渡し
売買契約後は、決済と物件の引渡しが同日に行われるのが通例です。売主は引渡し日までに、引越しや必要書類の準備を整えておくことが求められます。
確定申告と税金対策
不動産を売却して利益が出た場合、翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告を行う必要があります。この際、特例を活用することで節税が可能です。一方、売却が赤字となった場合でも、申告することで利用できる特例がありますので、忘れずに申告を行いましょう。
不動産売却時のよくあるトラブルとその解決策
不動産売却には、金銭や契約に関する問題、売り主の手続き不備、買い主の事情によるトラブルなど、さまざまな問題が発生することがあります。ここでは、よく見られるトラブル事例とその対処法について解説します。
重要事項説明を怠った場合
雨漏りやシロアリ被害、建築基準法違反など、物件に重大な問題がある場合、それを買い主に伝えずに売却すると、後に訴訟を起こされることがあります。
不動産取引では、売り主が物件の欠陥について書面で説明する義務があり、欠陥を知らなかったとしても、買い主から求められれば責任を取らなければなりません。このリスクを避けるために、事前にホームインスペクションを実施し、その結果を買い主に通知することが推奨されます。
売買契約後の一方的なキャンセル
契約後に買い主から「ほかの物件に決めた」「家族の反対で購入を取り消した」といった理由でキャンセルされることがあります。こうしたキャンセルを防ぐために、売買契約書に解約条件や違約金を明記しておきましょう。
買い主が手付金を支払っていれば、キャンセルされた場合にその没収を求めることも可能ですが、これに関して揉めることもあるため、慎重に対応が求められます。
囲い込み行為によるトラブル
不動産業者が自社の利益のために取引を独占し、ほかの業者や買い主からの問い合わせを断る「囲い込み」行為は、売り主に不利益をもたらすことがあります。囲い込みによって買い主が見つからず、販売が長期化することも考えられるでしょう。囲い込みを回避するためには、複数の不動産業者に査定を依頼し、対応を比較して信頼できる業者を選ぶことが大切です。
土地の境界線問題
売却する土地と隣地との境界線が不明確な場合、そのまま取引を進めるとトラブルの元となります。境界線がはっきりしないことで隣地所有者との意見の食い違いが生じ、後の責任問題につながることもあるため、売却前に土地家屋調査士を使って正確な境界線を確認しておくことが重要です。
不動産売却トラブルを避けるためのリスク軽減策
不動産売却にはさまざまなリスクが伴いますが、事前に対策を講じることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。以下では、リスクを軽減するための重要なポイントを紹介します。
信頼できる不動産業者を選ぶ
不動産売却トラブルのリスクを軽減するためには、信頼できる不動産業者と契約することがもっとも重要です。実績があり、誠実な対応をしてくれる業者に仲介を依頼することで、後々の説明不足や事前準備の不備によるトラブルを防げます。
信頼できる業者は、契約内容を丁寧に説明し、買い主への重要事項の伝達もしっかりと行います。また、複数の業者に査定を依頼し、面談を重ねて業者選びを慎重に行いましょう。
口約束を避ける
完全にトラブルを防ぐことは難しいですが、契約書をしっかり作成しておくことで問題が発生した際の対応を明確にし、トラブルの悪化を防ぐことができます。とくに重要なのは、口約束を交わさないことです。
口約束は法的効力がありますが、証拠として残りません。そのため、後々の裁判などで相手側の主張を証明できず、トラブルに発展する可能性があります。書面で契約内容を交わし、細部にわたる合意事項を明記することが非常に重要です。
まとめ
不動産売却には多くの手順や注意点があり、トラブルを未然に防ぐためには適切な準備が不可欠です。売却の流れを理解し、信頼できる不動産業者を選び、口約束ではなく書面で契約内容を確認しましょう。また、よくあるトラブルの事例を知り、それに対する解決策を事前に把握しておくことで、安心して売却を進めることができます。これらの対策を講じることで、売却プロセスをスムーズに進めることができ、トラブルを最小限に抑えることができるでしょう。