高齢者の方はとくに注目!不動産売却時に必要な「意思確認」とは?
高齢化社会が進み、不動産所有者の平均年齢が上がっています。高齢者が不動産売買の当事者になるケースも増加しているのです。その際に重要なのは本人確認と意思確認。とくに意思確認については2017年に行われた民法改正により、大きく変更されました。今回は不動産売却時の本人確認や意思表示の意味や必要性、意思確認の流れを解説します。
不動産取引で絶対に必要な本人確認
不動産を取引するとき、必ずしなければならない作業のひとつが「本人確認」です。これは売主・買主が本当に当事者であるのか確認する作業のこと。当事者が個人であるときは運転免許証をはじめとする公的な身分証明書が必要となり、法人であれば登記事項証明書や印鑑証明書、取引に携わっている当事者や法人の代表者の本人確認を実施します。
これらの確認が必要な理由は「なりすまし」を防ぐためです。本人確認作業を怠ったり、作業に不備があったりすると、不動産に関する権利を持っていない人と契約してしまい、本当の持ち主による取引が無効にされてしまい、大きな損失を被ってしまいます。実際、大手のデベロッパーすら騙され、数十億円の損失を出したことがありました。そうした被害を未然に防ぐため、契約前の本人確認は徹底的に行われるのです。
本人確認とは別に必要!「意思確認」を解説
不動産会社にとって、もうひとつの必須事項は「意思確認」です。2017年に改正された民法第3条の2項では「法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする」と明記されています。
ここでいう「意思能力を有しない人」は幼児や心神喪失者(精神障害などにより自分の行為の結果を判断する能力を欠く状態の人)、契約など自分が行った法律行為の結果を判断できる精神能力がない人のことです。とくに高齢者の場合は不動産取引について判断し、意思を示す能力があるかどうかが重要。意思確認が必要と判断されるのは以下のケースです。
・取引物件が共有名義のとき
・代理人が取引に立ち会うとき
・認知症などで判断能力に疑問符が付くとき
まず、取引物件の名義が複数人の共有となっているときは、誰かひとりでも反対すると取引が成立しないため、全員の意思確認が必須です。次に、本人の代理人と称する人物と交渉するときは、代理人が当事者から代理として認められているのか、本人に不動産を取引する意思があるのかを確認しなければなりません。そして、認知症などにより本人の判断能力に疑問があるときも意思確認が必要です。もし、意思確認を行ったときに当事者が物事を判断する能力(意思能力)を欠いているとみなされれば、不動産売買契約は無効となります。
なぜ「意思確認」が必要?
意思確認は高齢者で重要とされます。その理由は、「なりすまし」を予防するためと認知症などにより意思能力を欠いている恐れがあるためです。不動産取引において、悪意を持った「なりすまし」を行い、勝手に不動産を売却するケースがあります。そのとき、犯人は免許証やパスポートなどの本人確認書類を偽造し、あたかも不動産の所有者であるかのようにふるまい、買主から代金をだまし取ろうとするのです。
このようなことを防ぐには売主の自宅を訪問し、本人であるかを精査するとともに、売主に不動産を売却する意思があるかどうか確認しなければなりません。売主の意思能力の確認も重要です。高齢化が進むにつれ、持ち主が認知症やそのほかの病気のために正確な判断能力を有していないケースが増加2017年の民法改正では意思能力がない人の契約は無効となることが明記されています。
仮に、本人の意思能力の有無をあいまいにしたまま取引を進め、途中で意思能力がないことが判明すれば、どれだけ取引が進んでいようと白紙撤回されてしまうのです。契約が成立していたとしても不成立になります。このような事態を防ぐため、意思確認は絶対に必要だといえるでしょう。
不動産売却時の「意思確認」の流れ
不動産売却の意思確認は不動産会社だけではなく司法書士も関与します。司法書士が不動産登記に関する手続きを行うからです。そこで重視されるのが当事者の意思確認です。もし、その場で司法書士が本人の意思確認ができないと判断すれば、この取引・契約は白紙になってしまいます。
認知症などで判断能力がないと判断された人の不動産を売買するには、「成年後見制度」を活用しなければなりません。成年後見制度は対象となる人の財産管理を支援・保護する仕組みのことで、あらかじめ本人が決める任意後見制度と家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見人制度があります。
まとめ
今回は不動産売却時に必要な「意思確認」や本人確認について解説しました。2017年に改正された民法では判断能力に不安がある人の財産を守るため、意思確認が取れていない取引が無効となることが明文化されています。こうした人たちの名義になっている不動産を売買するには司法書士による意思確認が必須です。もし、意思確認が取れない状態であれば取引が無効になります。どうしても売買しなければならない事情があるときは、成年後見制度を活用しましょう。